物理の勉強方法について 塾・WHY
〈はじめに〉物理学はどんな学問なのか。
物理学は、我々の知覚作用と密接に関係している。見たり、聞いたり、感じたりする日常、身の周りにある現象がどのような自然法則に従って起っているのかを調べることを目標としている学問である。我々が、日常、殆ど無意識のうちに利用している電気を基にして機能する様々な電気製品、テレビ、ラジオ、コンピューター、さらには自動車や飛行機などなど、枚挙にいとまが無い程、沢山の恩恵を、物理学に負っている。従って物理学は、現在の我々の日常生活において、直接的なあるいは間接的な基盤をなしているといっても言い過ぎではない。
物理学の成果を利用することによって、人類は、より快適に、より便利に生活する為の手段を開発してきた。今や、多くの物理学者たちの努力によって、「物質の根源は何か」と言う極微の世界から「宇宙がどのようにして出来てきたのか」と言う広大な世界の問題さえも解決出来るまであと一歩のところに来ている。
以上の事から、物理をある程度学んでおくことは、身の回りで直接あるいは間接的に利用されている様々な機器についての知識を得る為にも、かなり役立つと考えられる。
一方、人類が営々と築いてきた科学文化の中で、物理学者達は、自然界で起っている現象を理解す為にこれを注意深く観察し、そこに隠された現象を支配する法則を見つけ出し、その信憑性を確認する為に実験を繰返し行い検証してきた。この過程はをまとめると以下のようになる。
『自然界の現象の観察と理解 →現象の法則化 → 実験による検証』
即ち、自然界で起る現象を理解する為には、注目する現象を詳細に観察し、その現象を司っている法則を見つけ出し、法則が正しいかどうかを検証する為に実験を行って、正しいと確認された時はじめて、法則として確立する。
〈物理と数学の関係〉
我々は、法則を言い表すために物理量の定義を行い、それを正確に表現するために、数学を利用するしか方法がない。つまり、数学は、物理量の提議や諸法則を定式化する為に必要不可欠の道具なのである。従って高校でも、ある程度は数学の知識が必要となる。大学入試において、物理の計算をする為に必要な数学は、高校で習う、ベクトルとその成分表示および微分積分である。
「ベクトル」は、重要な物理量(力,速度,加速度)を表すために必要なもので、「微積分の知識」は、瞬間的な物理現象を表現する為に必要となる。大切なことは、物理法則を表す方程式の裏に隠れている物理現象の本質(意味)に、絶えず注意を払う事である必要がある。
一方で、数学の中に物理法則が内在している訳ではない事も認識しておく必要がある。その理由は、数学は人間が作った理論体系であり、これとは別に、物理法則は自然が作り上げた体系だからである。然し、人類も自然の産物であることを考えれば、その人間が作った数学理論も自然法則の一部であると言えなくもないので、物理法則の表現に数学が役立つっているところを見ると、数学の中にも物理法則が隠されているかもしれない、と考えることは、それ程不自然なことではないかもしれない。
〈具体的な勉強の仕方〉
勉強の仕方をまとめると、以下の3つになる。
(1) 色々な物理量(例えば、速度、摩擦、電流、温度、熱、エネルギー、等々)の定義を正確に知ること。
(2) 次に様々な物理量の間に成り立っている法則を正確に知ること。
(3) 出題される色々な物理現象に対してそれらが、どの法則に結び付くかを、詳細な思考実験(頭の中で行う実験のこと)を行うことによって突き止める訓練を十分にやり込み、定義と法則の応用の仕方に習得すること。
以下では物理で用いる定義や法則を基本事項と呼ぶことにする
例えば、物理の問題としては、次のような問題がある。これらの問題は、この問題の関連する基本事項を用いれば、解決できる。
1) ボールを高く投げ上げる時、ボールが昇り得る最高点、と到達距離はいくらか。
2) やかんに入れたお湯を電気コンロで沸騰させるのに必要な時間と料金を知りたい。
3) 電気冷蔵庫は、なぜものを冷やせるのか。
4) 人工衛星はどうして落ちてこないのか。
5) 海の水はどうして宇宙空間に散逸しないのか。 等々。
入試におい出題されるどの問題も、基本事項を使いこなせるかどうかを問う問題である。従って、上で述べたように、ある問題がどの法則や定義に結びついているかを考え抜く訓練を十分に行えば、問題の本質を理解して解ける様になる。
解法の仕方をどんなに多く覚えてみても、また公式をどんなにたくさん覚えてみても、法則とその使い方を身に付けなければ、物理の学力を高める事は難しくなる。
物理の問題を解く時の訓練目標を図にまとめると右図のようになる。